まるでお芝居を観ているような感覚を味わうことができる映画を観ました。公開される前から映画館で鑑賞しようと思っていたのですが、気付いたら既にレンタルDVDとなっていました。そんな念願の作品だったこともあり、かなり気合を入れて鑑賞したのでした。
主人公の女子高校生、彼女を取り巻く家族、突然現れた実母など。誰もが個性的でどこにでもいるようでいなそうなキャラクターばかりでした。特に印象的だったのは、退屈でいつも不機嫌な主人公でした。考え方が独特で発する言葉がユニークなところに愛着が持てたし、冷静で現実的な視野も兼ね備えており周囲にいる誰よりも大人に思えるところも面白かったです。しかしながらこの最も興味深かったところは、普通ではない環境で暮らす人々があたかも極々普通の日常生活を送っているような錯覚に陥るところだったと感じます。爆弾を作り警察から追われる女、ワニに子供を食われた女性、元嫁の妹と結婚する男性など、かなりスキャンダラスな境遇を生きる者達なのに、それを当たり前のように捉えてしまう自分がいることに驚きを覚えました。
エンディングは淡々と描かれていながらも幾つかの事件が起こり、不思議な幕の閉じ方をするのですが、これもまたしっくりときてしまうところがやはりこの作品の持ち味なのだと納得したのでした。お腹の底から湧きあがる大笑いや心の底から涙を流すようなエモーショナルな映画ではありませんが、鑑賞後は「面白かった」と心から感じました。こんな今までにない不思議な感覚を味わうことができる作品に出会たことは、とても貴重な経験でした。